ボンデージタイムス

拘束と笑いが交錯する異色作『ボンデージタイムス』は、緊縛を競技やイベントとして扱う実験的構成が特徴的だ。コップ運びやホッグタイレースといったミニゲーム的展開のなかで、猿轡のくぐもった声と衣擦れの音が緊張感を増幅させる。ユーモアを交えつつも、女性たちが動けないまま挑戦を重ねる姿が独特の背徳的高揚を生む。

葉月教師が家庭訪問先を誤り、変質者の巣窟に迷い込むエピソードでは、知的で落ち着いた印象の教師像が拘束によって次第に崩れていく。川瀬七夏を中心としたキャスト陣は、それぞれ異なる悲鳴とまなざしを見せ、息づかいや唾音にまでフェチ的緻密さが宿る。レビューで特に評価された猿轡フェチの唇の動きも、この作品の象徴といえる。

プレイシーンでは、手足の縄が皮膚に食い込み、身じろぎのたびに小刻みに腰を震わせる様が際立つ。視聴者の多くが「唇の動きがたまらない」と評したように、言葉を奪われた状態の女性が伝える微細な感情の波がテーマの核をなす。羞恥と笑い、支配と抵抗が入り混じる展開が、ただのSMに留まらない心理的ドラマを描き出す。

レーベル「危機に陥った女たち」の作風を受け継ぎ、本作も実験的で演出色の濃いフェチAVとして位置づけられる。ギャグやインタビュー形式を用いることで、観る者に余裕を与えつつ緊縛の緊張を逆説的に際立たせる構成が巧みだ。声・拘束・羞恥の三要素を多層的に組み合わせた本作は、フェチジャンルの奥行きを再認識させる一本である。